石川佳純と平野美宇。しのぎを削りあったライバルは至極のパートナーとして東京五輪に挑む【代表内定物語】

「かすみう」は2020年2月にワールドツアー初優勝

石川佳純(かすみ)と平野美宇(みう)。東京五輪の卓球日本代表に内定している2人には共通点がある。ともに、物心ついたころから将来を嘱望されていた。リオデジャネイロ五輪では石川が団体戦で銅メダルを獲得する一方、平野は補欠として裏方に徹するなど明暗が分かれた。その後、東京五輪をめざして熾烈なライバル関係を展開してきた2人は、「かすみう」ペアとして世界の頂点をにらむ。

2020年2月のハンガリーオープンで優勝。「ペアを組んで初めての優勝なのですごくうれしい」と口をそろえた
2020年2月のハンガリーオープンで優勝。「ペアを組んで初めての優勝なのですごくうれしい」と口をそろえた2020年2月のハンガリーオープンで優勝。「ペアを組んで初めての優勝なのですごくうれしい」と口をそろえた

ともに幼少期は「愛ちゃん2世」と呼ばれる

石川佳純(かすみ)は1993年2月23日、山口県山口市に生まれた。父も母も元卓球選手で、父はインターハイとも呼ばれる全国高等学校総合体育大会、母は国民体育大会に出場するほどの実力者だった。

「卓球選手のサラブレッド」とも言える石川は小学1年生の時にラケットを握り始めた。7歳の誕生日プレゼントは卓球のユニフォーム。その数カ月後には小学2年生以下を対象とする全日本選手権バンビの部の山口県予選を2位で通過する。本選でもベスト64という結果を残した。

その後、石川は、母が指導する山口ジュニアクラブで練習を重ね、着実に成長していく。小学6年次に出場した2005年1月の全日本卓球選手権の一般女子シングルスでは高校生と大学生を破り3回戦まで駒を進めた。学年が4つ上で、小さなころから突出した才能を見せていた福原愛になぞらえられ、メディアから「愛ちゃん2世」という愛称を授かった。

石川が卓球のキャリアをスタートさせたころ、平野美宇(みう)は静岡県沼津市で産声をあげた。2000年4月14日に生まれた少女は3歳の時、中学から大学まで卓球部に所属していた母が開いた、平野英才教育研究センター卓球研究部でピンポン球を打つようになった。

平野もまた、早くから注目の存在だった。4歳の時に全日本卓球選手権のバンビの部に出場。その後も同大会への参加を続け、小学4年次には一般女子シングルスで勝利を挙げて最年少記録を更新した。負けず嫌いな性格とその実力から、やはり「愛ちゃん2世」と呼ぶ報道陣もいた。

2018年のワールドツアーグランドファイナルの女子シングルスでは初戦で激突。石川(手前)がゲームカウント4−1で平野(奥)を退けた。石川は準々決勝で敗退している
2018年のワールドツアーグランドファイナルの女子シングルスでは初戦で激突。石川(手前)がゲームカウント4−1で平野(奥)を退けた。石川は準々決勝で敗退している2018年のワールドツアーグランドファイナルの女子シングルスでは初戦で激突。石川(手前)がゲームカウント4−1で平野(奥)を退けた。石川は準々決勝で敗退している

リオでは石川の練習相手を平野が務めた

かつて「愛ちゃん2世」と呼ばれた2人は東京五輪の日本代表に内定している。女子団体のメンバーに選出された。石川は伊藤美誠とともに女子シングルスに出場するが、平野は選に漏れた。

ロンドン五輪とリオデジャネイロ五輪を経験している石川と、リオ行きのチケットをすんでのところで逃した平野。2016年8月にリオデジャネイロ五輪が始まるまで、石川の練習相手を務めたのは平野だった。補欠だった平野は、リオの大舞台でボール拾いなど裏方に徹した。

日本卓球協会は東京五輪の選考に関して、2020年1月時点の世界ランキングの上位2名に決定すると発表しており、石川と平野は長らくライバル関係にあった。

世界ランキングで浮上するには、各大会で結果を出してポイントを積み上げる必要がある。石川は中国人コーチのもと、中国語も身につけながら腕を磨き、平野はリオで味わった悔しさを胸に刻み、守備型から、高速ラリーを軸とする攻撃型の卓球にプレースタイルを変え、さらなる成長をめざした。

同じ目標を見据える2人にあって、より勢いに乗っていたのは平野だった。2016年10月にはワールドカップで大会史上最年少となる16歳での優勝を果たす。2017年1月の全日本選手権では決勝で同大会を3連覇中の石川を破り、こちらも大会史上最年少で金メダルを獲得した。同年のアジア選手権では日本人選手として21年ぶりのシングルス優勝。準々決勝では世界ランク1位の丁寧(ディンニン/中国)を下してみせた。高校卒業後は大学に進学せず、「より強くならなければ」という思いで2018年から日本生命に在籍し、卓球に専念する道を選んだ。

石川と平野の壮絶な代表争いにひとまずの決着がついたのは2019年12月だ。

伊藤美誠がすでに代表選出基準を満たして迎えたノースアメリカンオープンで、2人はともに決勝戦まで駒を進める。この時点では平野が65ポイントのリードを得ていた。第6ゲームまでもつれ込んだ熱戦を制したのは石川。逆に平野に135ポイントの差をつけることに成功し、うれし涙を流した。直後のグランドファイナルでともにポイントを積み上げられず、女子シングルスの残りの一枠は石川に決まった。

平野は2019年12月の世界卓球日本代表最終選考会の決勝で早田ひなを下し、悲願のオリンピック出場を手繰り寄せている。

2019年11月のワールドカップ女子団体戦では伊藤美誠(右から2人目)らともに銀メダルを獲得。石川(左から2人目)と平野(右端)はダブルスでペアを組んだ
2019年11月のワールドカップ女子団体戦では伊藤美誠(右から2人目)らともに銀メダルを獲得。石川(左から2人目)と平野(右端)はダブルスでペアを組んだ2019年11月のワールドカップ女子団体戦では伊藤美誠(右から2人目)らともに銀メダルを獲得。石川(左から2人目)と平野(右端)はダブルスでペアを組んだ

東京五輪の団体戦は「かすみう」ペアの起用が濃厚

東京五輪のシングルスの枠をめぐって壮絶なライバル関係を展開した2人だが、ぴたりと息の合ったパートナーでもある。

ともにオリンピック出場を決めてからの2020年1月、石川と平野はダブルスを組んでワールドツアー・ドイツオープンに参戦する。優勝は逃したものの、準決勝で丁寧(ディンニン)&孫穎莎(スンイーシャ)という中国の強豪ペアを倒し、一定の手応えを得た。直後のハンガリーオープンでも決勝まで進出。今度は杜凱琹(ドゥホイカン)&李皓晴(リホチン)という香港人ペアをゲームカウント3−0で下し、ワールドツアー初優勝を果たしている。

試合後、平野が石川について「フォアを強打で決めてくれるので心強いです」と語り、石川は平野について「バックハンドがすごくうまくて、勝負どころでいいプレーをしてくれた」と話した。「ペアを組んで初めての優勝なのですごくうれしい」と笑顔を見せた2人の前途は明るい。

同じく代表入りを内定させている伊藤美誠は平野と幼いころから「みうみま」ペアとして活躍してきた。ただし、東京五輪での団体戦はシングルスに専念する可能性が高い。また、伊藤は水谷隼との男女混合ダブルスに出場し、表彰台の頂点を狙う立場もある。

東京五輪の団体戦は第1試合にダブルスが行われる予定で、石川と平野のペアの起用が濃厚視されている。リオデジャネイロ五輪の女子団体は銅メダルを獲得した。「かすみう」ペアが華麗に突破口を開いていければ、前回大会を超える夢に近づいていく。

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