石川佳純:正統派攻撃スタイルの卓球で真っ向から打倒中国をめざす

卓球ブーム不動の「センター」のこれまでとこれから
2018年12月時点での世界ランキングは、日本選手最高位かつ自身最高位の3位。東京五輪での活躍が期待される
2018年12月時点での世界ランキングは、日本選手最高位かつ自身最高位の3位。東京五輪での活躍が期待される2018年12月時点での世界ランキングは、日本選手最高位かつ自身最高位の3位。東京五輪での活躍が期待される

「愛ちゃん二世」と言われて登場した石川佳純は、その福原愛とともに卓球ブームの中心的役割を担ってきた。抜群の身体能力を武器に、正統派攻撃スタイルで真っ向から打倒中国に挑む。東京五輪で悲願の女子団体金メダルと、日本初のシングルスのメダル獲得をめざす石川のこれまでとこれからを、卓球コラムニストが読み解く。


世界選手権では7個のメダルを獲得

石川佳純の存在は、近年の卓球ブームとぴったり重なる。

テレビ東京が民放として初めて卓球の世界選手権の放送を始めたのは2005年上海大会からだ。当時の日本代表には平野早矢香、福原愛などが名を連ね、今日の卓球ブームの礎となったが、ここに彗星のように登場したのが石川佳純だった。2007年の全日本選手権で史上最年少の中学2年生でベスト4入りし、同年の世界選手権ザグレブ大会に選出されて以来、2018年の4月から5月に行われたハルムスタッド大会まですべての世界選手権に出場。同大会では2017年に吉村真晴(名古屋ダイハツ)と組んだ混合ダブルスの金メダルを含む7個のメダルを獲得している。

オリンピックには2008年北京五輪から出場し、2012年ロンドン五輪では平野早矢香、福原愛とともに女子団体で銀メダルに輝き、日本卓球界に初のオリンピックのメダルをもたらした。続く2016年リオデジャネイロ五輪では、福原、伊藤美誠(みま)とともに女子団体2大会連続のメダル獲得の偉業を成し遂げた。

オリンピックでの女子団体の奮闘の様子は、いずれも「3人娘」と称されて日本中に感動をもたらした。「カスミン」とも呼ばれる可憐なアスリートの活躍は、観る者すべてを魅了した。卓球ブームはまさに石川佳純とともにあったと言っても過言ではない。

「愛ちゃん二世」として登場

石川佳純は、1993年2月23日、山口県に元卓球選手の両親のもとに生まれた。本格的に卓球を始めたのは7歳の時で、近所の卓球クラブに行ったのがきっかけだった。プレースタイルは左利きのオーソドックスな攻撃型だ。ほどなく頭角を現し、小学6年生で全日本卓球選手権ホープスの部(小学6年生以下)で優勝を果たす。小学6年生で初参戦した全日本選手権では一般の部で3回戦に進出し「愛ちゃん二世」と言われ注目を集めた。

大阪の四天王寺羽曳丘(はびきがおか)中学校へ進学してから四天王寺高校を卒業するまで、ミキハウスJSC卓球部に所属し腕を磨いた。全日本選手権で初優勝したのは2011年、四天王寺高校3年生の時だ。奇しくも準決勝で愛ちゃんこと福原愛を破っての優勝で、22年ぶりの高校生チャンピオンとなった。以来、全日本選手権の決勝に7回進み、4回優勝している日本女子卓球界の支柱的存在だ。

「愛ちゃん二世」と言われて卓球界に登場。福原愛(右)とともに卓球ブームの中心的役割を担ってきた
「愛ちゃん二世」と言われて卓球界に登場。福原愛(右)とともに卓球ブームの中心的役割を担ってきた「愛ちゃん二世」と言われて卓球界に登場。福原愛(右)とともに卓球ブームの中心的役割を担ってきた

世界に名をとどろかせた一戦

石川佳純の試合で最も大きな印象を残したのは、2009年世界選手権横浜大会での女子シングルス2回戦、当時世界ランキング10位の帖雅娜(ティエ・ヤナ/香港)にゲームカウント0−3、第4ゲーム3−9と絶体絶命のピンチから大逆転勝ちした試合だろう。この大会で石川佳純は2003年世界選手権パリ大会での福原愛以来のベスト8入りを果たし、ISHIKAWAの名を世界に知らしめた。この時、石川佳純はまだ16歳だった。

逆に、石川佳純の最も手痛い敗戦が、2012年世界選手権ドルトムント大会の韓国戦ラストの金暻娥(キム・キョンア)との一戦だろう。韓国の鉄壁のカットマン金に対して石川佳純は、ゲームカウント2−2で迎えた最終ゲーム、8−4のリードから追いつかれ、2回のマッチポイントを握った末に敗れる悪夢を経験した。「8−4でリードしたときに焦って打ってしまった」「我慢比べで負けてしまった」と石川佳純は敗戦後に語った。大会前に練りに練ったカットマン対策をやりこんだうえでの敗戦だった。勝つとはこれほどまでに難しいことなのかを実感したことだろう。

正統派スタイルで打倒中国をめざす

石川佳純の卓球は、打倒中国をめざす日本女子のなかにあっては珍しいほどの正統派の攻撃スタイルだ。伊藤美誠のようなバックハンドの無回転強打や、平野美宇のような極端に打点の速いバックハンドカウンタードライブといった「飛び道具」を持たず、すべての技術が正統派であり教科書的である。当然、相手にとって意外性がなく、やり難さがない。

石川佳純の武器はスタイルにあるのではない。持って生まれた均整のとれた身体と、抜群の運動能力に支えられた反応の速さ、移動の速さ、スイングの速さといったアスリートとしての能力そのものだ。これは中国女子の卓球と同じ方向である。石川佳純は、中国と同じ土俵で勝負を挑むというとてつもなく困難なことに挑戦し続けている。

そのスタイルを貫き、2012年ロンドン五輪では女子シングルスの銅メダル決定戦でシンガポールの馮天薇(フォン・ティエンウェイ)に惜敗し、日本女子個人種目初のメダル獲得まであと一歩と迫った。

2012年のロンドン五輪では福原(左)と平野早矢香(右)とともに女子団体で銀メダルを獲得した
2012年のロンドン五輪では福原(左)と平野早矢香(右)とともに女子団体で銀メダルを獲得した2012年のロンドン五輪では福原(左)と平野早矢香(右)とともに女子団体で銀メダルを獲得した

団体と個人で金メダルをめざす東京五輪

2018年12月現在、石川佳純の世界ランキングは日本選手最高位かつ自身最高位の3位だ。東京五輪の女子シングルス出場枠2名に入る可能性は極めて高い。選出されれば、2017年世界選手権で金メダルを獲得し、東京五輪から新種目として追加される混合ダブルスにも期待がかかる。

2018年10月に開幕した日本初のプロリーグ「Tリーグ」へは木下アビエル神奈川のエースとして参戦し、リーグを盛り上げている。この期に及ぶ日本卓球界への貢献は計り知れない。

石川佳純が卓球を選んでくれたことは奇跡だった。東京五輪でもう一つ奇跡を見たいと言ったら贅沢が過ぎるだろうか。

文=伊藤条太(Jota ITO)

2016年リオデジャネイロ五輪の女子シングルスではまさかの初戦敗退。東京五輪に寄せる思いは強いはず
2016年リオデジャネイロ五輪の女子シングルスではまさかの初戦敗退。東京五輪に寄せる思いは強いはず2016年リオデジャネイロ五輪の女子シングルスではまさかの初戦敗退。東京五輪に寄せる思いは強いはず

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