華麗でスピーディーな足技が魅力、テコンドーの注目選手は・・・

1988年ソウル五輪、1992年バルセロナ五輪の公開競技として行われ、2000年シドニー五輪で正式競技になったテコンドー。発祥の地、韓国の国技でもあるこの競技は、「足のボクシング」ともいわれ、スピーディーで見応えのある足技が見どころだ。

組手(キョルギ)と型(プムセ)という二つの形式で競うテコンドーのうち、オリンピックに採用されているのは組手。男女ともに4階級で、トーナメント方式で争われる。8メートルの八角形のマットで1ラウンド2分間を3ラウンド行い、ノックアウト(KO)で決着するか、得点と減点の集計で決まる。3ラウンドでも同点の場合は、ゴールデンスコア方式の延長戦2分で勝敗を決する。

多くの人たちの想像通り、テコンドーで韓国が一歩リードしていることは確かだろう。だが、テコンドーに熱心に取り組む国は年々増えており、世界に8,000万人もの愛好家がいるという。2020年東京五輪では、男女ともに、どの国にもメダル獲得のチャンスがある。


世界選手権で日本人初の優勝を達成した濱田真由(右)。
世界選手権で日本人初の優勝を達成した濱田真由(右)。世界選手権で日本人初の優勝を達成した濱田真由(右)。

世界選手権で日本人初の金メダル:濱田真由

まず、注目選手として最も気になるのは、57kg級の濱田真由だ。2015WTF世界テコンドー選手権大会(ロシア)女子57kg級で、日本人初となる金メダルを獲得した。ロンドン、リオデジャネイロ五輪に続いて、三大会連続での出場が期待されている。

テコンドーを始めたのは小学1年生。高校に入ってから、現役を引退した同郷の先輩でもある元日本代表の古賀剛から指導を受け、佐賀県立高志館高等学校在学中の2010年3月、世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得。2011年2月に全日本テコンドー選手権大会初出場で初優勝という快挙を達成するなど、世界に通用する選手として期待を寄せられるようになる。以降、2015年まで5連覇、2017年には再び優勝した。

ロンドン五輪では、テコンドー史上日本最年少の17歳でオリンピックに初出場。5位入賞と健闘をみせた。卒業後は社会人として働きながら練習に取り組み、“国内敵なし”と言われるまでに成長。2015年の世界選手権では日本人史上初の金メダルに輝き、頂点へ。競技に専念するため、プロへと転向し、勢いそのままに出場したリオ五輪では、世界の強豪選手と紙一重の戦いを見せるも、9位という結果に終わってしまった。

174cmという長身と、長い脚を最大限に生かした「カット」という技を武器に、世界と戦う濱田。2018年の夏には自身初の米国、英国、豪州への“単身武者修業”を決行。世界の強豪たちとの“出げいこ”で、経験を積んできた。男女通じて、テコンドーで初めての世界一を日本にもたらしたのは、すでに3年前のことだ。悔しい思いをしたリオ五輪をバネに、東京五輪で見事な復活を果たしてほしい。

18年アジア大会では58kg級で銅メダルに輝いた鈴木セルヒオ。
18年アジア大会では58kg級で銅メダルに輝いた鈴木セルヒオ。18年アジア大会では58kg級で銅メダルに輝いた鈴木セルヒオ。

挫折を知る実力派エリート:鈴木セルヒオ

2018年8月のアジア競技大会テコンドー男子58kg級で3位に入賞し、銅メダルを獲得。日の丸をまとっての東京五輪出場に期待が募るのは、日本テコンドー界期待の新鋭、鈴木セルヒオだ。

試合になると、爽やかなルックスからは想像がつかないほど、試合の際はガラッと雰囲気が変わってとてもアグレッシブな戦いを見せる彼。1994年10月9日、日本人の父健二さんとボリビア人の母ノルマさんの間に生まれ、5歳のときに家族とともに南米ボリビアに移住。お兄さんが空手をやっていた影響と、両親の勧めから格闘技に興味を持っていたところで、テコンドーと出会い、次第にのめりこむようになった。高校は単身でテコンドーの本場韓国の伝統校の漢城高校へ留学 。3年間本場のテコンドーを学んだのち、 日本の強豪校である大東文化大学に進学して、技を磨いてきた。

2013年、2014年と全日本学生テコンドー選手権大会58kg級で2連覇。2015年3月には全日本選手権制覇、5月には豪州オープンで世界ランキング2位のドイツ人選手を撃破するなど、着実に実績を積み上げてきた鈴木。リオデジャネイロ五輪アジア地区選考会を勝ちぬき、五輪出場を決めれば、家族の住む南米へ「凱旋里帰り」となるはずだったが、あと1勝というところで、その夢は潰えた。

あれから4年。待ち焦がれたチャンスがようやくやってきた。蹴り技、特に上段蹴りを得意とする鈴木セルヒオ。「練習と試合を重ねていくごとに、心身ともに成長していることを実感できます」と語る。前回五輪のアジア地区選考会で惜しくも出場を逃した分、その雪辱を期す東京五輪にかける想いは強いだろう。

鈴木セルヒオはもっと、強くなる――。


山田美諭は18年アジア大会49kg級で銅メダルを獲得。
山田美諭は18年アジア大会49kg級で銅メダルを獲得。山田美諭は18年アジア大会49kg級で銅メダルを獲得。

五輪予選の大ケガから復活:山田美諭

鈴木セルヒオが銅メダルを獲得した2018年8月のアジア競技大会。鈴木に続いて、女子49kg級で銅メダルを獲得し、東京五輪に向けて大きな弾みをつけたのが、山田美諭だ。

普段は、東京都内にある信用金庫で働く彼女。女性らしい雰囲気からは想像もできないが、コートに立てば、柔らかい身体を駆使したキレのある華麗な蹴り技を武器に、対戦相手を圧倒する。その実力は全日本選手権を7度制覇したほどだ。

現在25歳の山田。父親が空手道場を経営していたこともあり、3歳の頃から空手を始め、中学1年でテコンドーに転向した。成長するにつれ、体格が大きいと有利になる空手では、だんだんと勝てなくなったことがきっかけだという。その決断は成功した。空手で鍛えられた体幹の強さが攻撃力のベースになり、テコンドーに転向後は2011年の第5回全日本選手権46kg級で優勝すると、翌年からは49kg級に転向して2015年まで5連覇を達成している。その間の2013年世界選手権ではベスト8、2014年アジア大会では5位と力を伸ばした。

大東文化大学に在籍していた4年間は、まさにリオデジャネイロ五輪だけを目指してテコンドー漬けの日々。誰もが山田選手の代表入りを期待していたが、2016年の五輪予選で右足の前十字じん帯と外側側副じん帯を損傷。約1年半の離脱を余儀なくされたが、約1年間のリハビリを経て2017年1月の全日本選手権優勝で復活。2018年も連覇し、再び世界を目指している。いまの最大の目標は、もちろん2020年の東京五輪。ケガという苦杯をなめた彼女のさらなる真価は、次の五輪にかかっている。

東京五輪は国内でテコンドーをメジャーにする絶好のチャンスだ。各選手は出場するだけでなく、是非メダルを取って、アピールしてもらいたいものだ。現在の日本テコンドー界には、この3名以外にも、世界で活躍できる可能性を持った選手は少なくない。東京五輪は、男女合わせて4つ開催国枠で、日本から複数の選手が出場できる。テコンドーは、空手が採用された東京五輪終了後、次期五輪までに正式競技としてふさわしいかどうかの再評価を受けることになる。力を合わせて成績を残すことができれば、競技を広くアピールしていく絶好の機会となるだろう。

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