藤井菜々子:ケガがきっかけでやむなく出場した競歩。瞬く間に高校日本一に輝いたシンデレラストーリー【アスリートの原点】

「県大会に行ければいい」初レースからインターハイ制覇の逸材

2020年3月15日に全日本競歩能美大会が行われ、女子はエディオン女子陸上競技部の藤井菜々子が優勝。岡田久美子に続く2人目の女子20キロ競歩日本代表に内定した。昨秋の世界陸上競技選手権大会で7位に入賞しているが、もともとは長距離志望。それでも憧れの岡田に導かれ、オリンピックの舞台にたどり着いた。

2019年秋に行われた世界陸上競技選手権大会では7位の成績を残す。世界でも十分通用することを証明してみせた
2019年秋に行われた世界陸上競技選手権大会では7位の成績を残す。世界でも十分通用することを証明してみせた2019年秋に行われた世界陸上競技選手権大会では7位の成績を残す。世界でも十分通用することを証明してみせた

「走りたいから」頑なに拒否した競技転向

陸上競技を始めたばかりのころ、藤井菜々子の頭の中に「競歩」の選択肢はなかった。

長距離を走ることが大好きで、小学1年生の時から校内のマラソン大会で優勝していた藤井は、小学3年時から陸上クラブに通い始めた。当時は100メートル走や4×200メートルの800メートルリレー、クロスカントリーなどの種目にも取り組んでいたが、心はやはり「長い距離を走ること」に向いていた。地元の那珂川北中学校に上がると、800メートルや1500メートルなどの中距離が中心となる。学校の部活動に所属しながらクラブチームにも通い、平日も土日も練習漬けの日々を送った。

高校は「駅伝を走りたい」ことを理由に、親元を離れて長距離の強豪校、北九州市立高等学校に進学する。トラックでは3000メートルや5000メートルに取り組みながら、1年生にして全国高校駅伝の地区大会を走った。そんな藤井に大きな転機が訪れたのは高校1年の2月。左足のすねを疲労骨折し、しばらく競技から離れざるを得なくなった。

そのリハビリの過程で出合ったのが競歩だ。心肺能力を高めるため、競歩の練習をしていた先輩や同級生の後ろをついて歩いた。すると、その歩きを見た同校の荻原知紀監督は大きな可能性を予期した。藤井は「走りたいから」と転向を拒否したものの、故障明けの状態でほかに出場できる種目がなかったことから、「1回出てみろ」という監督の指示のもと、やむなく北部ブロック予選会に出場した。

高校卒業後の2018年にエディオン女子陸上競技部に入部。世界競歩チーム選手権という国際舞台を経験し、U20女子10kmで3位の好成績を残している
高校卒業後の2018年にエディオン女子陸上競技部に入部。世界競歩チーム選手権という国際舞台を経験し、U20女子10kmで3位の好成績を残している高校卒業後の2018年にエディオン女子陸上競技部に入部。世界競歩チーム選手権という国際舞台を経験し、U20女子10kmで3位の好成績を残している

女子の第一人者、岡田久美子に憧れて

「県大会に行ければいい」と軽い気持ちで初レースに臨んだ藤井だったが、見事に予選会を突破。そこから2週間後の福岡県大会で優勝、さらに2週間後の北九州大会も制覇し、夏のインターハイでついに日本一に立った。レースに出るたびにタイムが縮まっていく状況にいながらも、「私は長距離」と頑なに走ることへのこだわりを捨てない。そんな藤井を競歩の世界へと導いたのは、女子の第一人者で、東京五輪代表に内定している岡田久美子だった。

藤井は2017−18シーズン、日本陸上競技連盟が選手の強化育成を目的に導入している「ダイヤモンドアスリート」制度の4期生に認定され、その活動のなかで岡田と一緒に練習する機会があった。岡田とトレーニングや会話を通して世界のトップレベルを肌で感じた藤井は、競歩で「世界をめざしてみたい」と考えるようになった。

高校2年次に出場した国民体育大会でゴールした際には、デジタルカメラをトラックに持ち込み、岡田と記念写真を撮った。岡田に続いて女子20キロ競歩オリンピック代表に内定した藤井は2020年の夏、憧れの先輩とともに東京五輪の舞台に立つ。

選手プロフィール

  • 藤井菜々子(ふじい・ななこ)
  • 競歩選手
  • 生年月日:1999年5月7日
  • 出身地:福岡県那珂川市
  • 身長/体重:159センチ/44キロ
  • 出身校:那珂川北中(福岡)→北九州市立高(福岡)
  • 所属:エディオン女子陸上競技部
  • オリンピックの経験:なし
  • インスタグラム:藤井菜々子 fujii nanako(@nako5775)

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