【アスリートの原点】前田穂南:高校3年間は補欠止まりながら、マラソンで東京五輪切符をつかんだニューヒロイン

子どものころはピアノ、そろばん、美術、水泳、バスケットボールに励む

前田穂南(ほなみ)は、東京五輪マラソン代表選考会のグランドチャンピオンシップ(MGC)を2時間25分15秒のタイムで制し、東京オリンピック行きの切符をつかみ取った。マラソン界の23歳のニューヒロインを支えているのは、3年間補欠という悔しさを味わった高校時代にも折れなかった、鋼のように強い心だ。

実業団の天満屋に入社したのは「マラソンが強くて一番練習がハードなところ」だったから。厳しい練習を続け、オリンピック出場の夢を叶えた
実業団の天満屋に入社したのは「マラソンが強くて一番練習がハードなところ」だったから。厳しい練習を続け、オリンピック出場の夢を叶えた実業団の天満屋に入社したのは「マラソンが強くて一番練習がハードなところ」だったから。厳しい練習を続け、オリンピック出場の夢を叶えた

高校3年次には1500メートルで大阪府大会を制す

1996年7月17日に兵庫県尼崎市で生まれた前田。両親がテレビドラマ『東京ラブストーリー』のファンであったことから、ヒロイン役だった女優の鈴木保奈美と同じ読み方の「穂南(ほなみ)」と名付けられた。

前田穂南は幼少期から陸上一筋だったわけではない。両親は娘の将来の可能性を広げようと、多くの習い事をさせた。ピアノは2歳から高校まで続け、小学生時代にはそろばん、美術、水泳、バスケットボールに励んだ。

陸上競技を本格的に始めたのは中学からだ。高校は強豪、大阪薫英女学院高校に進学した。3年次に1500メートルでインターハイ大阪府大会を制している。

ただし、在校時の先輩にはMGCにも出場した松田瑞生(みずき)がいたほか、下級生にも実力者がそろっていたため、全国高校駅伝には縁がなく、3年間補欠止まりだった。もちろん、実力がなかったわけではない。恩師の安田功監督はある取材で「他校ならエース級だった」と振り返ってる。

控えに甘んじるなか、前田は文句も言わず、卒業するまで黙々と同じ態度で練習を続けた。他人と比較することなく、自分の陸上を追求し続けた3年間だった。その根源には、「マラソンでオリンピックに出て、世界と戦いたい」という強い気持ちがあった。

陸上競技を本格的に始めたのは中学時代。MGCでは2位に2分差以上をつけてゴールテープを切った
陸上競技を本格的に始めたのは中学時代。MGCでは2位に2分差以上をつけてゴールテープを切った陸上競技を本格的に始めたのは中学時代。MGCでは2位に2分差以上をつけてゴールテープを切った

実業団での厳しい練習にも耐えた鋼の心

高校卒業後、実業団の天満屋に入社すると、ようやく彼女の努力は実を結び、ロード種目で頭角を現す。

初マラソンとなった2017年の大阪マラソンは2時間32分19秒で12位に入り、飛躍の予感を漂わせた。そして同年夏の北海道マラソンでは、2時間28分48秒のタイムで優勝し、MGCファイナリスト女子第1号となった。この躍進には、高校時代に味わった悔しさがバネとなっていることは間違いない。

だが、天満屋入社後の努力にも目を見張るものがある。「マラソンが強くて一番練習がハードなところ」と希望して入社した天満屋は、これまで日本女子実業団で最多となる4人のオリンピアンを送り出している。

天満屋の練習は予想どおり厳しいものだったが、前田は必死に食らいついた。2019年4月から月間1000キロを走破した。30キロ走の最後1キロをペースアップさせる練習では、その1キロで3分を切った。芝生のクロスカントリー50キロ走では、27キロで脱水症状となり離脱したが、それ以外の練習はほぼ100パーセント近く達成。天満屋の武冨豊監督が「これでダメなら諦めがつく」と言い切るほど走り抜いた。

積み重ねた努力が自信となり、MGCでは20キロ以上を「自分の感覚で」独走。2位に2分差以上をつけてゴールテープを切った。

悔しさを乗り越え、苦しい練習にも耐え抜いた鋼の心は、前田の競技人生を支える核。東京五輪でも力強く走り抜く姿が見られるはずだ。

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