陸上800メートルは「トラックの格闘技」。第2コーナー以降の選手たちの駆け引きに注目

ときには接触による転倒といったアクシデントも

中距離における強豪はアフリカ勢だ。タイムだけで見れば、日本は世界との差がまだあるものの、800メートルに関して言えばそれだけで優劣はつけられない。レース中に行われる選手たちの駆け引きも勝敗に影響するからだ。東京五輪では日本勢では勢いのある若手女子ランナーたちに期待がかかる。

北村夢は2017年、日本人女子歴代2位となる2分00秒92をマークしている
北村夢は2017年、日本人女子歴代2位となる2分00秒92をマークしている北村夢は2017年、日本人女子歴代2位となる2分00秒92をマークしている

実力者ぞろいのケニア勢。なかでも「怪物」に要注目

陸上800メートルには、短距離のレースにはない魅力がある。

競技は400メートルトラックを2周。スタートしてからはそれぞれのレーンを走るが、第2コーナーを曲がってからはオープンレーンとなる。つまり選手はどのレーンを走行しても問題ないため、選手同士によるポジション争いや駆け引きが発生する。ときには接触による転倒といったアクシデントも起こる。その激しさゆえに「トラックの格闘技」と言われることもある。

強豪国はやはり中長距離を得意とするアフリカ勢だ。特に男子はケニアが2018年シーズンのタイムランキングトップ10に7人もランクインするなど、実力派ランナーを多数擁する。1分40秒91という世界記録でロンドン五輪の800メートルを制したデイビッド・ルディシャが輩出したケニア勢において、特に目を引くのはエマニュエル・コリルだ。力強い走りが特長で、「怪物」の異名を持つ。2018年8月に開催されたロンドンダイヤモンドリーグでは自己ベストとなる1分42秒05を出して優勝するなど、2020年の東京五輪に向けて注目が集まるランナーだ。

ケニア勢以外ではナイジェル・アモス(ボツワナ)の存在も無視できない。コリルを超える1分41秒73という自己ベストを持つ。これは世界3位のタイムだ。リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得したクレイトン・マーフィー(アメリカ)もメダルに近い選手の一人と見なされている。

左からアモス、マーフィー、「怪物」コリル。いずれも東京五輪の800メートルのメダリスト候補だ
左からアモス、マーフィー、「怪物」コリル。いずれも東京五輪の800メートルのメダリスト候補だ左からアモス、マーフィー、「怪物」コリル。いずれも東京五輪の800メートルのメダリスト候補だ

日本勢の女子は「2分の壁」越えが課題

日本に目を向けるとまだ世界との差はまだ大きい。日本男子800メートルと言えば、2018年の日本陸上競技選手権大会で同大会6連覇を果たした川元奨(しょう)に期待がかかる。自己ベストは2014年5月に開催されたセイコーゴールデングランプリで出した1分45秒75。これは日本記録でもあるが、世界と比較するとやや物足りない感がある。

一方、日本勢の女子は「2分の壁」を越えることが目下の課題となっている。女子の800メートル世界記録は、1983年にヤルミラ・クラトフビロバ(チェコスロバキア)が出した 1分53秒28。日本記録は杉森美保が2005年に出した2分00秒45で、世界との差はまだまだ大きい。

ただし、若手の台頭に期待が高まる。2017年の日本学生陸上競技対校選手権で北村夢が日本人女子歴代2位となる2分00秒92をマークし、同年8月に開催された全国高等学校総合体育大会では塩見綾乃(あやの)が高校新記録となる2分02秒57、川田朱夏(かわた・あやか)が2分02秒74を記録した。北村は1995年生まれ、塩見と川田は1999年生まれと若い。若手特有の吸収力が生きれば、2020年の東京五輪までにさらに大きく成長する可能性は十分にある。

スピードや持久力だけでなく、ポジション争いや駆け引きもものを言う800メートル。2020年夏、「トラックの格闘技」がオリンピックスタジアム(新国立競技場)を大いに沸かせるのは想像に難くない。

日本男子では川元に注目。日本陸上で6連覇を果たしている実力者だ
日本男子では川元に注目。日本陸上で6連覇を果たしている実力者だ日本男子では川元に注目。日本陸上で6連覇を果たしている実力者だ
  • ルディシャが800m世界新で金 | ロンドン2012リプレイ

    ルディシャが800m世界新で金 | ロンドン2012リプレイ

楽しめましたか?お友達にシェアしよう!