高山峻野:アジア大会の銅メダルを追い風に、 日本人初の五輪メダル獲得を目指す 

日本人選手にメダリストが多いことや、昨今のランニングブームなどから、マラソン人気が高い一方で、短距離走、その中でも障害走となると、残念ながらあまり注目度は高くない。しかし、2018年のアジア競技大会では、日本人選手が3大会ぶりに銅メダルを獲得、日本勢の存在感を、久しぶりに世界に示した。それが高山峻野だ。力強い走りで、日本記録に肉薄する自己ベストを持つ実力派。2020年東京五輪に向けて、日々トレーニングに励んでいる。

アジア大会で銅メダルを獲得した高山峻野
アジア大会で銅メダルを獲得した高山峻野アジア大会で銅メダルを獲得した高山峻野

アジア大会で3大会ぶり表彰台の快挙

2018年8月にジャカルタで開催されたアジア大会男子110m障害決勝。第4レーンの高山選手は、レース序盤から先頭争いに加わり、終盤まで粘ってゴールした。ゴール直後にトラックに倒れ込むほど、気迫のこもった走りを見せ、4位のアルムアラッド(サウジアラビア)に0.02秒という僅差で競り勝ち、銅メダルに輝いた。また、自己記録に0.04秒まで迫る好記録をマークした。試合後に受けたメディアのインタビューでは、「意地でも3位を取りたいと飛び込んだ。これ以上ないレース」と答え、頬を緩めている。

無冠の高校時代、そして大学で悲願の初優勝

高山選手は1994年9月3日、広島県生まれ。身長182cm、体重73kg。地元の中学校に入学した当初は、野球もしており、陸上は二の次だったそうだ。しかし、広島県中学校陸上競技選手権で予選落ちしたことをきっかけに、2歳上の兄に続いて陸上に専念することを決意。その後、上級生の影響を受けて、ハードル競技を始めることにしたという。当時の陸上部顧問は「彼は負けて強くなった選手。普段はおっとりした性格だが、ときどき自分の中でスイッチが入る瞬間があった」と、地元の陸上会報誌のロングインタビューの中で振り返っている。

進学した広島工業大学高校では、高校3年生までに高校歴代8位(当時)相当の記録を持ち、周囲の下馬評も高い中でインターハイに出場。しかし、110m障害予選のレースでバランスを崩して転倒。予選落ちを喫して、実力がありながら高校時代は無冠のままで終わった。その3年後の2015年、明治大学3年生で出場した日本選手権で、くしくもインターハイで転倒した競技場の同じレーンに立った高山選手は、接戦を制して自身初の優勝を果たした。

2017年、高山はゼンリンに入社し、実業団で活躍している。ライバルは2018年のアジア大会で競り勝った金井大旺(福井県スポーツ協会、アジア大会では7位)。金井はアジア大会の直前に110m障害で13秒36をたたき出し、谷川聡選手の日本記録(13秒39)を14年ぶりに更新した。高山は2017年に13秒44を出し、日本記録にあと0.05秒と肉薄していたが、先を越されてしまった格好だ。同年代のライバル選手には、13秒4を出して、同じく日本記録に迫った増野元太がいる。

2017年に初めて世界選手権に出場
2017年に初めて世界選手権に出場2017年に初めて世界選手権に出場

強さの秘密は強靭なメンタル

髙野が主戦場とする110m障害は、10台のハードルを跳び越えながら110mを走る。ハードルの高さは1.067m、1台目までは13.72m、ハードル間は9.14mと決まっている。故意でければ、ハードルを倒しても構わない。400m障害と違って直線のため、400mで起こりがちな利き足が逆になったり、カーブにあるハードルを超える際のミスが起こったりしにくいのも特徴だ。

短距離は0.1秒の差がものをいう。大学時代から本格的に取り組んだメンタルトレーニングのおかげで、高山は大舞台でも緊張せずに、普段通りにレースに臨めるようになったという。陸上選手は強い心がなければ、ライバルに競り勝つことはできないのだ。

高山は2017年の日本選手権で優勝した。その際に記録した13秒44が自己ベストだ。同年、初めて世界選手権に出場し、大きな期待を受けながらも、予選落ちに終わっている。その後、国体で5位、2018年の日本選手権は2位、そして、ジャカルタのアジア大会で日本人最高位の3位となった。

現在の世界記録は2012年ロンドン五輪の金メダリストで、アメリカ人のアリエス・メリット選手が持つ12秒80だ。過去のオリンピックのメダリストは、圧倒的にアメリカ人選手が多く、日本人のメダリストはいないのが現状だ。

少数精鋭による出場枠争い

国際陸上競技連盟(IAAF)は2018年7月、2020年東京五輪の出場資格について、今後導入される世界ランキングで上位に入ること、これまで同様にIAAFが定める参加標準記録を突破することの2通りと決め、どちらかの基準を満たせば、資格を得られるとしている。高野が出場する110m障害の場合、ランキングの対象となる期間は、2019年7月1日~2020年6月29日のため、この間の成績が重要となる。

110m障害のような個人種目は1種目につき各国・地域3人までで、4人以上が資格を得た場合は、国・地域で選考することになった。現在、日本陸上連盟が同種目で、日本代表として選抜しているのは、高野のほか、矢澤航(デサントTC)、増野元太(ヤマダ電機)、大室秀樹(大塚製薬)の4人。このほかにも、日本記録保持者の金井大旺らが出場を狙っている。どの選手も国内外の大会で優秀な記録を残しているため、少数精鋭による激しい出場争いになるだろう。

陸上競技の中でも、日本人メダリストが多いマラソンと違って、障害走は世界の壁が高すぎて、あまり注目されることがなかった。高山はオリンピック初出場に向けて日々、トレーニングに励み、その様子を自らのSNSで動画発信している。400m障害はマイナー競技とは言え、過去においては、為末大選手のようなスター選手を輩出している。五輪出場を目指し、高山が地道に結果を重ねていけば、必ず注目される日がくるだろう。

  • リオリプレイ:陸上競技男子110mハードル決勝

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