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19世紀末に発明された2人乗りのタンデム自転車は1908年のロンドン五輪で正式種目に【消えた五輪競技】

パラリンピックでは今も花形競技の一つ

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

100年以上の歴史を持つオリンピックでは「消えた競技」もある。1908年のロンドン五輪から始まったタンデム自転車もその一つだ。2人乗りの自転車競技は1972年のミュンヘン五輪を最後にオリンピックでは行われていない。四年に一度のスポーツの祭典から姿を消したタンデム自転車がたどった道程とは。

デンマーク人のミカエル・ペデルセンによって発明されたタンデム自転車。1908年のロンドン五輪で正式に採用された

19世紀末に市民権を得た2人乗り自転車

タンデム自転車は英語では「Tandem Cycling」と呼ばれる。ラテン語に語源を持つ「Tandem」は「縦に並んで」「縦に並んだ」という意味を持ち、もともとは2頭の馬による馬車を示す際などに使われていた。

一台の自転車にサドルとペダルが2つずつ。2人が前後に並んで漕ぐタンデム自転車の歴史は古い。発明したのはデンマーク人のミカエル・ペデルセンで、1893年に特許を取得したという記録が残されている。イングランドで特に人気を博した。1892年に発表された「DAISY BELL」というレコードのジャケットにはタンデム自転車が描かれ、歌のなかには「a bicycle built for two(2人用の自転車)」という歌詞が出てくる。

一台の自転車で友人と移動したり、恋人とペダルを踏んだり、身体的なハンディキャップを持っている人とサイクリングを楽しんだりという側面が手伝い、タンデム自転車はほどなく市民権を得た。

18世紀末に誕生した自転車は、時代の流れとともに単なる移動手段ではなくスポーツとしても受け入れられるようになった。フランス人のピエール・ド・クーベルタン男爵のアイデアを発端に近代オリンピックが開催されたのは1896年。記念すべき第1回のオリンピックで、陸上や水泳、体操やレスリングとともに、自転車競技も採用されている。以降、自転車競技は途切れることなく、四年に一度開催されるスポーツの祭典で実施されてきた。

1896年のアテネ五輪とほぼ同時期、主に男性向けの競技用タンデム自転車も開発された。英国のオリエント・バイシクル社は10人乗りの自転車をつくったと言われている。これについては宣伝的な効果を狙ったものと考えられているが、19世紀末、タンデム自転車への注目度が高まっていたのは間違いない。

1964年の東京五輪でもタンデム自転車は実施されている。八王子自転車競技場が会場で、セルジョ・ビアンケットとアンジェロ・ダミアーノのイタリア人ペアが優勝した

2連覇を果たしたセルジョ・ビアンケット

アテネ五輪における自転車競技の採用や認知度の向上が後押しし、タンデム自転車も早くからオリンピックの舞台で実施されている。

正式種目となったのは1908年のロンドン五輪。男子のみを対象に2000メートルのトラックを競うルールで、モリス・シユとアンドレ・オフレのフランス人ペアが金メダルを獲得した。銀メダルと銅メダルは開催国イギリスのペアが勝ち取った。

タンデム自転車は以降、1972年のミュンヘン五輪まで自転車競技の一つとしてオリンピックを盛り上げた。強豪はヨーロッパ勢で、フランスが計4回、イタリアが計3回、イギリスが計2回、ドイツとオランダとソ連が1回ずつ金メダルを獲得している。

タンデム自転車の歴史に名を残す一人が、イタリア人のセルジョ・ビアンケットだ。1960年のローマ五輪ではジュゼッペ・ベゲットと、1964年の東京五輪ではアンジェロ・ダミアーノとコンビを組み、2連覇を達成した。東京五輪ではスプリントの個人競技で銀メダルを獲得している。ビアンケットは1939年2月16日生まれのアスリートで、1964年の東京五輪後にプロに転向し、1969年に現役を引退している。

1972年のミュンヘン五輪を最後に、タンデム自転車は五輪競技から廃止されたという認識が浸透している。「消えた競技」となった理由は明確にされておらず、2021年に行われる予定の東京五輪でも封印されたままとなっている。

パラリンピックでは前方に健常者に座り、後方に視覚障がい者が並ぶ形が基本。2021年の東京五輪でも実施される

パラリンピックを彩るタンデム自転車

オリンピックでは半世紀ほど日の目を見ない一方、タンデム自転車はパラリンピックで花形競技の一つとなっている。2人乗りの自転車は、世界最高峰の障がい者スポーツ大会を彩ってきた。

パラリンピックのペアは、前方に「パイロット」と言われる健常者に座り、後方に「ストーカー」と呼ばれる視覚障がい者が並ぶ形が基本だ。「パイロット」がハンドル操作を主に担当する。

パラリンピックでは1996年のアトランタ大会で正式採用された。オリンピックとは異なり、男性アスリートだけでなく、女性も対象となっている。アトランタ大会の女性部門では、相対する2組が合図とともにスタートし、お互いに前にいる対戦相手を追うパーシュートも行われ、オーストラリアが金メダルを勝ち取った。カナダが銀メダル、アメリカが銅メダルを獲得している。

2021年の東京五輪でもタンデム自転車が行われる。トラックは他の自転車競技と同じく静岡県の伊豆ベロドローム、または富士スピードウェイが会場となる。

日本人の注目アスリートの一人は、リオデジャネイロパラリンピックの女子タンデム個人ロードタイムトライアルで銀メダリストとなった鹿沼由理恵だろう。もともとはクロスカントリースキーの選手で、2010年にはバンクーバー冬季パラリンピックにも出場している。故障の影響で自転車競技に転向すると、努力を重ね、世界屈指のサイクリストとなった。東京パラリンピックで狙うのは、もちろん金メダルだ。

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