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2大会で銀銅獲得の三宅宏美や前回入賞の糸数陽一がメダル候補!日本のクリーンな姿勢が追い風に

日本のエース三宅宏実(写真はリオ五輪)

ウエイトリフティングは、古代ギリシャで行われていた、石を持ち上げる“力比べ”が起源とされている。こうした力比べは、古来より世界各国で行われており、最も根源的な競技のひとつといえる。男女別・体重別で行われるため、分かりやすく、公平なことが特徴だ。

バーベルを持ち上げるだけ!?シンプルな中に奥深さがある

ウエイトリフティングは男女別・体重別で行われる。男子は61kg級、67kg級、73kg級、81kg級、96kg級、109kg級、+109kg級の7階級。女子は49kg級、55kg級、59kg級、64kg級、76kg級、87kg級、+87kg級の7階級となっている。

競技は、まず「スナッチ」を3回、その後に「クリーン&ジャーク」を3回行う。「スナッチ」は両手でバーベルを握り、一気に頭上まで持ち上げて立ち上がる動作。「クリーン&ジャーク」はプラットフォーム(床)から、いったん鎖骨の位置までバーベルを持ち上げ(クリーン)、次の動作で頭上に差し上げる(ジャーク)動作となっている。順位は「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」、それぞれの最高重量の合計で争われる。

バーベルを持ち上げるだけ。競技自体は非常にシンプルだが、細かいルールも定められている。例えば、試技を行うのは名前を呼ばれてから1分以内となっている。また、バーベルを持ち上げる間に、肘の曲げ伸ばしがあってはならず、左右の腕の伸び方に不均衡があってはならない。そして、バーベルを持ち上げた後も、レフェリーが合図をするまで、両足を結ぶ線、胴体、バーが平行になった状態で静止する必要がある。短い時間で集中力を高め、自分の体重よりも重たいバーベルを、正確にコントロールしなければいけない。シンプルに見えるだけに、競技を理解すれば理解するほど、その奥の深さが伝わってくる。

1928年アムステルダム五輪でのウェイトリフティング

ドーピング違反国には重いペナルティ。開催国日本はメダル競争で優位に

国際重量挙げ連盟(IWF)は2018年4月、2020年東京五輪の予選方式を発表した。ホスト国の日本は、男女各3階級で1枠ずつ、合計6つの出場枠を確保した。東京五輪の出場枠は、2020年4月までに行われるIWFが指定した大会における成績をポイント化し、この上位選手に出場権が与えられる。ただし、日本を含めて各国・地域で獲得できる出場枠は、男女ともに最大4枠、合計8枠までとなった。

また、ドーピング違反に対する制裁として、2008年から2020年の間に違反数が20以上となった国と地域は、男女ひとつずつ、合計2つまでに出場枠が制限される。現時点では、ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャン、アルメニア、ベラルーシが該当している。さらに、違反が10~19件の国・地域は、男女各2枠までに制限される。ブルガリアやイラン、インドなど9つの国と地域が該当している。

ウエイトリフティングは第1回アテネ五輪から実施されている競技だ。そのメダル獲得数はロシアと中国が群を抜いている。特に近年は、中国が目覚ましい躍進を遂げている。日本も、リオデジャネイロ五輪では三宅宏実が女子48kg級で銅メダルを獲得。さらに男子62kg級の糸数陽一が4位、女子58kg級の安藤美希子が5位、女子53kg級の八木かなえが6位入賞を果たしている。東京五輪では、ドーピング違反により出場枠を制限された国と地域があるため、より多くのメダルの獲得を望めそうだ。

リオデジャネイロ五輪で活躍した選手が東京五輪でも活躍か

現在の日本国内において、特筆すべきはリオデジャネイロ五輪で結果を残した選手たちの揺るぎない強さだ。とりわけ東京五輪に向けて注目したいのは、糸数陽一、三宅宏美、八木かなえの3選手だ。

糸数陽一は、リオ五輪で5位に入った

糸数陽一は、1991年5月24日、沖縄県南城市生まれ。生まれてすぐから中学卒業までを、沖縄県の離島の久高島で過ごしている。2007年、沖縄本島の豊見城高校に進学し、本格的にウエイトリフティングに取り組む。すると、2年生から2年連続で全国高等学校競技選抜大会(選抜)、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)、国民体育大会(国体)の3冠を達成。2008年にはアジアユース選手権優勝も果たした。

2010年、日本大学に進学。日本オリンピック委員会(JOC)の強化指定選手となる。しかし、同年にトルコで開催された世界選手権は、失格による記録なしに終わる。これを契機に、階級を56kg級から62kg級への変更を決断。しかし、男子ウエイトリフティングの日本の出場枠はひとつ。“1キロの差”でロンドン五輪を逃してしまった。

2014年からは警視庁に所属。2016年のリオデジャネイロ五輪で5位に入賞すると、翌年11月にアメリカ合衆国で行われた世界選手権で、銀メダルを獲得する。2018年にインドネシアのジャカルタで行われたアジア大会は、同年春に腰を痛めた影響で5位に終わったが、2019年2月にタイで行われた国際大会「EGAT'sカップ」では、スナッチ133kg、ジャーク160kgのトータル293kgで優勝。スナッチとトータルで、自身の持つ日本記録を1kg更新した。

三宅宏実はロンドンとリオ、2大会連続で表彰台に上がった。

三宅宏実は、1985年11月18日生まれ、埼玉県出身。父・義行はメキシコ五輪の銅メダリストで、伯父・義信は東京およびメキシコ五輪の金メダリスト。2人の兄も競技経験者と、ウエイトリフティング一家に生まれる。中学3年生から競技を始め、埼玉栄高校1年のときに全国女子高校選手権大会で優勝。3年生の時には全日本選手権を制した。

2004年に法政大学に進学。同年のアテネ五輪で9位。大学卒業後はいちごグループホールディングスに入社。2008年の北京五輪で6位入賞を果たす。2012年のロンドン五輪で、女子48kg級の銀メダル、2016年のリオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得する。現在はいちごウエイトリフティングでコーチ兼選手。2019年4月からは、筑波大学の大学院生として東京五輪を目指す。

八木かなえは、リオ五輪で6位に入った

八木かなえは、1992年7月16日生まれ、兵庫県出身。5歳から器械体操を始め、中学時代に全日本ジュニア選手権で入賞。須磨友が丘高校に進学後、ウエイトリフティングに転向。すぐさま頭角を現し、アジアユース選手権で優勝を果たした。2011年、金沢学院大学に進学する。

2012年ロンドン五輪は12位、2016年リオデジャネイロ五輪は、女子53kg級で6位入賞を果たす。ただし、東京五輪では53kg級がないため、三宅宏美のいる49kg級か、55kg級のいずれかに転向する必要がある。現在はALSOKに所属。2019年4月のアジア選手権は55kg級で出場することが決まっている。

ドーピング違反がない日本は最大8人の出場が可能。自国開催の優位性を生かせ

ウエイトリフティングは、パワーでバーベルを持ち上げるイメージがあるため、身体の大きいヨーロッパや米国の選手が有利という印象を受ける。しかし、実際には、高度な精神力を必要とする競技であり、さらに体重ごとに階級が分けられているため、身体が小さい人でも、十分に世界で戦える公平な競技なのだ。

また、ドーピング違反の多い国や地域が出場枠を制限されたことにより、これまでクリーンに競技や選手育成を行ってきた日本は、すでに確保した出場枠6に加え、最大8人の出場が可能となった。国・地域別で定められた出場枠の制限により、出場できなかった選手にもチャンスが与えられたことで、日本ウエイトリフティング界にとって東京五輪が追い風となることは間違いない。