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2019-20スキージャンプ女子W杯プレビュー:高梨沙羅はW杯個人最多勝利記録をさらに伸ばせるか? 

日本勢ではW杯で5度優勝の伊藤有希にも注目

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

スキージャンプワールドカップは、国際スキー連盟が開催するスキージャンプのシーズンごとの大会だ。女子の部は2010/11シーズンから実施されており、2010/20シーズンは12月6日のリレハンメル大会が開幕戦となる。圧倒的な存在感を誇る「女王」高梨沙羅を筆頭に、しなやかに大空にはばたく「美翔女」たちはどんな戦いを見せてくれるだろうか。

W杯での個人最多勝利記録を持つ高梨沙羅。今年のサマーグランプリで2連勝を果たすなど好調を維持している

昨シーズンは悔しい4位。1勝にとどまった「女王」

スキージャンプワールドカップ(以下、W杯)への参加資格を持つのは、国際スキー連盟に登録し、シーズン開始時の暦年から15年以前に生まれた選手。つまり今シーズンの場合は「2019年-15年」という計算から2014年以前に生まれた選手となる。

各国に与えられた選手枠は原則として最大6人だが、開催国の場合は最大12人の出場が認められている。2019/20シーズンは2019年12月6日のリレハンメル大会で開幕し、年が明けた1月10日からは札幌大会、16日からは蔵王大会と日本でも開催され、3月のロシア大会まで熱き戦いが続く。各試合の入賞者には順位に応じてW杯ポイントが与えられ、その合計点により年間王者が決定する。

2018/19シーズンは、女子歴代最多のシーズン個人総合優勝4回を誇る「女王」の高梨沙羅や、2014年ソチ五輪の日本代表を経験し、W杯では5度の優勝を記録している伊藤有希、2018年平昌五輪の日本代表に選出された岩渕香里(かおり)と勢藤優花、そして1998年生まれの丸山希などが出場した。

高梨は2018年12月1日に行われた個人第2戦で、前日と同じスーツを着用していたにもかかわらず、規定違反で失格と判定されるなど、序盤からトラブルに見舞われた。しかし翌2019年2月の第15戦では、初勝利を挙げ、W杯での勝利記録を個人最多となる56勝に伸ばすと、最終的には4位でシーズンを終えた。日本勢の順位は、伊藤が高梨に次いで12位、丸山が20位、勢藤が22位、岩渕が27位となった。

2018/19シーズン総合の表彰台の頂点に立ったのは平昌五輪のノーマルヒル金メダリストであるマーレン・ルンビ(ノルウェー)。2位は同オリンピックで銀メダルを首にかけたカタリナ・アルトハウス(ドイツ)、3位はユリアーネ・ザイファルト(ドイツ)だった。

伊藤有希は今年11月2日に札幌で行われたUHB杯ジャンプ大会を制覇。高梨を抜いて7年ぶり2度目の優勝を手にした

サマージャンプGPでは「新星」丸山が日本人2位に

毎年7月から10月にかけて行われる夏季の大会、スキージャンプ・サマーグランプリでも日本代表選手たちは奮闘を見せた。夏開催の場合は通常、セラミック製のレールを使用した助走路と、プラスチックを敷き詰めたランディングバーンで構成されるジャンプ台を使用することになる。

この大会で圧巻の大記録を打ち立てているのはやはり、高梨だ。2012年から行われている女子のサマーグランプリでは、開始以来ずっと頂点に立ち続けてきた。

今年7月のドイツ大会で高梨は、団体(HS108)で準優勝、個人(HS108)で優勝と順調なスタートを切ると、8月のフランス大会でも好調を維持。1回目が125.5メートル、2回目が126.1メートル、3回目が124.0メートル、4回目が128.7メートルで、計254.8点を記録して、2大会連続優勝を飾った。その後の個人最終戦となる第3戦には出場しなかったものの、総合ポイントで首位に立ち、個人総合8連覇を見事に成し遂げている。W杯では「成績を残すことが重要」と語った高梨は、自らのスタイルを模索しながら最高の形で頂点をめざす。

サマーグランプリで高梨に続く健闘を見せたのは、8位の丸山だ。高梨同様、最終戦は不出場に終わったが、第1戦で5位、第2戦では7位に入り、若手の勢いを見せつけた。19位は1戦目で9位、2戦目で13位に入った勢藤。伊藤は総合27位と不本意な結果に終わったが、今年11月2日に札幌で行われたUHB杯ジャンプ大会では、最長不倒の125メートルを飛び、高梨を抜いて7年ぶり2度目の優勝を果たすなど、W杯に向けてパフォーマンスは高まっている。

ドイツのカタリナ・アルトハウス(左端)とノルウェーのマーレン・ルンビ(中央)。高梨とともに優勝候補の筆頭と見られている

ルンビとアルトハウス、平昌五輪のメダリストが高梨のライバルに

「世界の高梨」を尊敬し、ライバルとして捉えているのは日本人選手だけではない。その存在は世界中の女性スキージャンパーにとっての一つの指標であり、モチベーションとなっている。

今年のサマーグランプリで高梨と同ポイントにつけながら、勝利数で及ばず順位としては2位に終わったのはニカ・クリズナー(スロベニア)もその一人だろう。2000年生まれの新鋭で、2015/16シーズンからW杯に出場し始めたばかりだが、初のオリンピックの舞台となった平昌でも7位に入るなど、大舞台に強い一面を持つ。今夏さらに自信を深めたことで、堂々としたプレーを見せる可能性が高い。

平昌の舞台でも「最大のライバル」として注目されていたルンビは、おそらく今回も高梨の前に立ちはだかるだろう。身長152センチの高梨に比べ20センチも高い173センチの長身を誇り、抜群のバランス感覚と鍛え抜かれた肉体で飛距離を伸ばしていく。そのジャンプを目の当たりにした、もう一人の「レジェンド」葛西紀明が「男と同じ方法のジャンプをしている」と驚いたという。

一方、高梨と同じく小柄な157センチのアルトハウスも、1996年生まれの若手ながら女子スキージャンプ界をけん引する存在だ。高梨自身も「彼女のジャンプは好き」と評しており、互いに切磋琢磨する関係を築いている。