オリンピックとパラリンピックに出場するアスリートの誰もが望むもの。それは、3位までにのみ与えられるメダルだろう。2020年の祭典に向けて日本は興味深いプロジェクトを立ち上げた。「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」という名前のもと、オリンピックとパラリンピック史上初の試みの実現に向けて活動を続けている。

2020年のメダルは、使用済み小型家電から抽出された金属でつくられる予定だ
2020年のメダルは、使用済み小型家電から抽出された金属でつくられる予定だ2020年のメダルは、使用済み小型家電から抽出された金属でつくられる予定だ

約5000個のメダルを「都市鉱山」からつくり出す

2018年12月、世界的な大手メディアのBBCが「The surprising source of the Tokyo 2020 Olympic medals」という記事を世界に発信した。「2020年東京五輪のメダルは、驚きの素材でつくられる」というタイトルのもと、日本の挑戦的な取り組みを紹介している。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」(以下「みんなのメダルプロジェクト」)を実施している。日本全国の参加を促す「東京2020参画プログラム」の一つで、使用済みの携帯電話やパソコンといった小型家電から、日本を舞台に世界中のアスリートたちが獲得を狙うメダルを製作するという一大企画だ。資源を有効活用し、持続可能な社会をつくっていくためのモデルケースにするという狙いもある。

「みんなのメダルプロジェクト」は、オリンピックとパラリンピックの両大会をカバーしている。2つの大会で使用する「金」「銀」「銅」の計5000個ほどのメダルを、使用済み小型家電から抽出された金属かでつくる試みが現在進行形で実施されている。

アスリートの誰もが望むメダルが、資源を有効活用してつくられる
アスリートの誰もが望むメダルが、資源を有効活用してつくられるアスリートの誰もが望むメダルが、資源を有効活用してつくられる

廃棄の小型家電製品には年間850億円の資源がある

リサイクルでオリンピックのメダルを製作するのは、今回が初めてではない。たとえば2016年のリオ五輪では銀メダルの約30%、銅メダルの約40%でリサイクル金属が使用されている。2010年のバンクーバー冬季五輪では、ベルギーの都市鉱山からメダルの約1.5%をまかなわれた。

BBCが「驚きの素材(The surprising source)」と報じたのは、日本がメダル製作のリサイクル率100%をめざしているためだ。オリンピックとパラリンピック史上初の取り組みとして焦点を当てられた。

日本全体で1年間に使用済みとなったスマートフォンやゲーム機などの小型家電製品は,約65万トンに至ると推定されている。そのなかには金や銀、鉄や銅といった有用な金属が含まれおり、金額にすると年間850億円近くに達すると言われている。廃棄された大量の家電製品のなかに、実は価値ある資源が眠っている「都市鉱山」をいかに有効活用するかは、地球規模の課題と言っていい。

「みんなのメダルプロジェクト」は日本ならではのテクノロジー技術を駆使して、まだ活躍の場がある資源を有効活用しようというもの。大量に家電製品が廃棄されるようになった現代世界の今後を見据える観点でも、大きな関心を寄せられている。

金メダルは最低6グラムの純金でできており、残りは銀だ。「みんなのメダルプロジェクト」では多くの銀を回収する必要がある
金メダルは最低6グラムの純金でできており、残りは銀だ。「みんなのメダルプロジェクト」では多くの銀を回収する必要がある金メダルは最低6グラムの純金でできており、残りは銀だ。「みんなのメダルプロジェクト」では多くの銀を回収する必要がある

達成率は、金が54.5%、銀が43.9%、銅が100%

2018年10月、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に、2017年4月の「みんなのメダルプロジェクト」発足後初めてリサイクル金属が納入されている。

2018年6月までの回収分で、内訳は金が16.5キロ、銀が1800キロ、銅が2700キロというもの。達成率で見れば、金が54.5%、銀が43.9%、銅が100%となっている。

納入式には2016年のパラリンピックで水泳50メートルの自由形で銅メダルを獲得した山田拓朗も参加した。山田は次のように話している。「東京2020大会は皆さんの思い出がつまった携帯電話などからつくられるということで、アスリートは皆さんの思いを身近に感じることができるし、より一層誇らしい気持ちになると思います」

40個ほどのスマートフォンから抽出される金は1グラム程度。国際オリンピック委員会(以下IOC)の規定では、金メダルは少なくとも6グラムの純金による金張りを施さなければならないとされている。単純計算で言えば、使用済みのスマートフォンが240個あれば、金メダル一つぶんの金がカバーできることになる。電子情報技術産業協会の発表によると、2018年11月の1カ月の携帯電話国内出荷実績は160万台。いずれ寿命が訪れる携帯電話やスマートフォンの多くが「みんなのメダルプロジェクト」に回されれば、メダル製作のリサイクル率100%も十分に実現可能だ。

金メダルは最低6グラムの純金とされているが、実は金メダルはそのほとんどが銀でできている。銀メダルも含めると、メダル製作に使用される材料は銀が多い。不要になった家電をより多く集め、そこからより多くの銀を回収する必要がある。「みんなのメダルプロジェクト」という名前のとおり、当事者意識を持った日本全国の関与が不可欠となる。

使用済みのスマートフォンが240個あれば、金メダル一つ分の金が回収できる
使用済みのスマートフォンが240個あれば、金メダル一つ分の金が回収できる使用済みのスマートフォンが240個あれば、金メダル一つ分の金が回収できる

「みんなのメダルプロジェクト」は個人単位でも参加可能

国際オリンピック委員会は、メダルの重量を500グラム〜800グラムと定めている。この重さの金銀銅を合わせた約5000個のメダルを再生金属で製造するには、四年に一度の祭典まで残り一年となった2019年の活動が重要になる。

メダルの原材料になるのは、携帯電話やスマートフォンだけに限らない。パソコン、デジタルカメラ、タブレット、プリンター、電話機やFAX、オーディオプレーヤー、レコーダー、スピーカー、カーナビ、炊飯器、ジューサーやミキサー、コーヒーメーカー、ホットプレート、加湿器、除湿機、空気清浄機、電動歯ブラシ、電気カミソリ、家庭用ミシン、各種ケーブル類、リモコン、時計、電子書籍端末などの一部が、2020年のメダルに生まれ変わる。

すでにプロジェクトに賛同したパートナー企業などが使用済み業務用携帯電話やスマートフォンなどを提供しているが、この試みには個人単位でも参加できる。参加方法は大きく分けて3通り。「日本全国のドコモショップでの回収(株式会社NTTドコモがプロジェクト参加事業者であるため)」「プロジェクト参加自治体等による回収」「宅配回収」のいずれかを通して、リサイクル率100%を目標とするメダル製作にかかわることができる。

すでに述べたとおり、達成率では、金が54.5%、銀が43.9%と、金メダルと銀メダルの原材料がまだ足りていない。個人単位での参加は、大きな負担もなく回収してもらえる。不要になった電化製品があれば、ただ処分するのではなく、手軽な回収方法を通して「みんなのメダルプロジェクト」にかかわるほうがスマートだろう。使われなくなった家電製品から価値がある資源を抽出しメダルを製作した実績は、2020年以降の世界に大きな影響を与えるはずだ。

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