2019 IAAF世界選手権:大会を楽しむために知っておくべき情報

トラック競技とフィールド競技のトップアスリートがカタールのドーハで繰り広げる、東京2020までの期間で最大の陸上競技大会の完全版ガイド。

日本でオリンピック開幕へのカウントダウンが進む中、東京2020までの期間で最大級の陸上競技大会となるIAAF世界選手権が開催される。

ウサイン・ボルトが引退した今、新世代のスプリンターにはバトンを引き継ぐ活躍が期待される。

アメリカのノア・ライルズマイケル・ノーマン、シドニー・マクラフリン はドーハのハリーファ国際スタジアムでさらなる栄光を目指す。

また、モー・ファラーがトラックを去った今、長距離でも新たなスターが求められている。

エチオピアのハゴス・ゲブリウェトセレモン・バレガは後継者の有力候補だが、ノルウェーのヤコブ・インゲブリクトセンとケニアのロネックス・キプルトという10代の2人も有望株だ。

オリンピック金メダルを誇るジャマイカのシェリー=アン・フレーザー=プライズとケニアのフェイス・キピエゴン は、出産後に以前の強さを見せられるだろうか?

夜間マラソンが開催される理由とは?なぜウサイン・ボルトキャスター・セメンヤがいまだに紙面をにぎわせているか?その答えを、このガイドを読んで知ろう。

カタールのドーハで行われる大会は9月27日から10月6日まで続き、男子と女子のアスリートが24種目で競い合う。

まずは各種目の注目選手を紹介しよう。

シェリー=アン・フレーザー=プライス:リオ・オリンピック ハイライト

シェリー=アン・フレーザー=プライス:リオ・オリンピック ハイライト

クリスティアン・コールマン(アメリカ)、100m

屋内大会に出場しなかったアメリカのクリスティアン・コールマンが、100mの金メダル最有力候補だ。

ロンドンで開かれた2017年の世界選手権ではガトリンに次ぐ2位。ウサイン・ボルトより先にゴールした。

反ドーピング規則違反の嫌疑で資格停止の危機にあったが、米国アンチ・ドーピング機関は嫌疑を不問とした

ノア・ライルズ(アメリカ)、200m

ノア・ライルズは200mで歴代4位の記録を持ち、初の世界選手権メダル獲得に燃えている。

ダイヤモンドリーグのローザンヌ大会で19秒50のタイムをたたき出し、歴代記録でウサイン・ボルト、ヨハン・ブレークマイケル・ジョンソンの次に入った。

リオ2016で惜しくもメダルを逃して以来、200mで敗れたのは一度のみ

それは6月のダイヤモンドリーグ・ローマ大会で、マイケル・ノーマンに屈した。

ライルズは100mでも上海で9秒86という今シーズン2位のタイムをマークしている。

マイケル・ノーマン(アメリカ)、400m

昨年プロに転向したマイケル・ノーマンは、初のフルシーズンで大舞台に臨む。

学業を終えて競技に専念できるようになった21歳は、さっそく目覚ましい結果を残している。

世界ジュニア選手権を2度制し、今シーズン400mで負けなし。2019年4月に43秒45を記録し、歴代4位に入っている。

ジャマイカのスプリント女王 - エレイン・トンプソンとシェリー=アン・フレーザー=プライス

2つの五輪金メダルを誇るエレイン・トンプソン、そしてシェリー=アン・フレーザー・プライスは、キングストンでの世界選手権選考会で女子100mの今季最高記録を出した。

記録は共に10秒73だった。

フレーザー=プライスは男児出産後、競技に復帰して間もない。

200mもスターが競い合うレースとなる。

この距離でも最速のトンプソンは、リオで金メダリストに輝いたバハマのショーナ・ミラー=ウイボ、イギリスのディナ・アッシャー=スミス、今季好調なナイジェリアのブレッシング・オカグバレと対戦する見込みだ。

サルワ・エイド・ナセル(バーレーン)、400m

ミラー=ウイボは200mに専念する予定で、400mはサルワ・エイド・ナセルが金メダル候補とされている。

アジアランキング首位のナセルはロンドン2017で銀メダルを手にしており、今回はその上を目指す。ライバルはニジェールのアミナトウ・セイニだ。

21歳のセイニは世界記録更新も視野に入れている。

シドニー・マクラフリン(アメリカ)、400mハードル

シドニー・マクラフリンは普通の19歳ではない。

17歳でリオ2016に出場し、過去40年で最年少のアメリカ代表オリンピアンとなった。

その1年後にはプロ契約を締結。

6月にオスロでダイヤモンドリーグデビューを果たすと、オリンピック金メダリスト、世界選手権覇者、アメリカ王者を破った

今回は優勝の最有力候補だ。

地元の英雄アブデラマン・サンバ(カタール)、400mハードル

アブデラマン・サンバは開催国カタールにとって初となる世界選手権でのスプリント種目優勝と、世界記録更新を期待されている。

負傷により、2018年の驚異的な活躍を続けることを阻まれた。

この種目では、し烈な競争が予想される。ノルウェーの前大会覇者カルステン・ワーホルムはダイヤモンドリーグ・ロンドン大会で47秒12をマークし、欧州記録を更新。

このワーホルムの記録が今シーズンのベストタイムとなっている。

アメリカのスター、ライ・ベンジャミンも、ケビン・ヤングがバルセロナ1992で打ち立てた世界記録の更新を狙う。

注目の中距離スター - フェイス・キピエゴン(ケニア)、1500m

リオ2016金メダリストのフェイス・キピエゴンは、出産後最初の1500mレースとなったプリフォンティーン・クラシッックで4分を切った。

娘が1歳の誕生日を迎える前日にマークしたタイムは3分59秒04。

ユースとジュニアでも世界女王に輝いたキピエゴンは、この力強い復帰初戦で大会連覇に弾みをつけた。

ヤコブ・インゲブリクトセン(ノルウェー)、1500m

欧州選手権で2つの金メダルを手にしたヨーロッパ王者ヤコブ・インゲブリクトセンは、初の世界選手権優勝を狙う。

昨年の欧州選手権では、1500mと5000mで頂点に立った。

ライバルは2年前に銀メダルを獲得したケニアのティモシー・チョルイヨット。だが、インゲブリクトセンは成長し続けている。

セレモン・バレガ(エチオピア)、5000m

エチオピア勢の強さが際立つ5000mで、最有力はセレモン・バレガ。ロンドンで優勝した同胞のムクタル・エドリスに続こうとしてる。

17歳で出場した2年前の前大会は5位でフィニッシュ。以後ダイヤモンドリーグ4大会に出場し、コンスタントに表彰台に上っている。

7月17日にヘンゲロで開かれた国内選考会では、10000mでハゴス・ゲブリウェトに次ぐ2位に入った。

ジュリウス・チェプテゲイ(ウガンダ)とロネックス・キプルト(ケニア)、10000m

ゲブリウェトのほか、ウガンダのスター選手ジュリウス・チェプテゲイとケニアのロネックス・キプルトも東アフリカに10000mのタイトルを取り戻すホープとされている。

モー・ファラーがタイトルを独占してきたこの種目では、2011年を最後にアフリカ人王者が生まれていない

ファラーはマラソンに専念するためトラックを去った。

チェプテゲイはロンドン開催の2017世界選手権で銀メダルを手にしている。

この種目の次のスーパースターと目されており、ケニア陸上界の父ブラザー・コーム・オコネルに師事。デイビッド・ルディシャと同じコーチの下で練習している。

フィールド種目 - モンド・デュプランティス(スウェーデン)、棒高跳

モンド・デュプランティスが注目の選手であることは間違いないが、どこまで記録を伸ばせるか という点にも関心が集まる。

18歳の若さで6.05mを跳んで欧州タイトルを手にし、一躍有名になった。

プロ転向後初めて出場したダイヤモンドリーグ・スタンフォード大会でも優勝している。

フアン・ミゲル・エチェバリア(キューバ)、走幅跳

キューバのフアン・ミゲル・エチェバリアの躍進が止まらない。

2018年のダイヤモンドリーグ・ストックホルム大会で8.83mを跳び、過去20年以上でベストの跳躍記録をマーク。20歳の若さで世界記録更新のみならず世界選手権優勝の最有力候補と目されている。

その大ジャンプは追い風参考記録とされた。世界記録は1991年にマイク・パウエルが樹立した8.95m。

カタリーナ・ジョンソン=トンプソン(イギリス)、七種競技

カタリーナ・ジョンソン=トンプソン は七種競技でイギリスに 4度目の世界王座をもたらせるだろうか?

今年のカタリーナは好調を維持し、自己ベストを更新するなど大ブレークの予感を漂わせている。

2015年の北京大会では、金メダル獲得に近づきながらもファウルで自滅。リオ2016でも6位に甘んじた。

しかし、相次ぐ故障を乗り越え自信を深めた現在は、連覇を狙う女王ナフィサトウ・ティアムに挑戦すべく、新たな拠点のモンペリエでトレーニングに励んでいる。

カタリーナと一緒に練習しているのは、十種競技の世界記録を持つケビン・マイヤー

2017年の世界陸上で金メダルに輝いたフランス人アスリートだ。

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IAAF世界選手権にウサイン・ボルトがいない理由は?

ドーハで行われる今大会は、男子陸上界の4大スターがいない。その理由は…

ウサイン・ボルト

ウサイン・ボルトはシニア初参戦の大阪2007で銀メダル2個を獲得すると、その後の6大会すべてで圧倒的な強さを発揮。

しかしロンドン2017では4x100mリレー決勝でハムストリングを痛め、ジャマイカを5連覇に導くことができなかった。

43年の歴史を持つ世界選手権で最も成功を収めたアスリートは、現役最後となった100mも3位でフィニッシュした。

モー・ファラー

世界制覇6回の実績を誇るモー・ファラーは、10000mで金メダル、5000mで銀メダルを獲得した2017年大会を最後にトラック競技から引退した。

このイギリス人ランナーは、世界大会で史上初の3大会連続2冠を達成。

36歳になった現在は、マラソンでの東京2020出場を新たな目標に掲げている。

ウェイド・バン・ニーケルク

400mの世界記録を持つ前大会王者は、ドーハで連覇を目指すことはないと9月初めにソーシャルメディアで公言していた

南アフリカ出身のオリンピック金メダリストは、2017年に負ったケガの回復が遅れている。当初はこの大会にも出場する意向を示していたが、2019年初頭の「軽い負傷」により断念した。

デイビッド・ルディシャ

デイビッド・ルディシャが最後に出場した主要大会は、オリンピック連覇を成し遂げたリオ2016。

800mの世界記録保持者は大腿四頭筋のケガが完治せず、ロンドン2017を欠場。結局このケガにより、その年のレースにほとんど出場できなかった。

2017年1月を最後に実戦から遠ざかっている29歳は、ドーハでの復活を期していた。その願いはかなわなかったが、東京2020で有終の美を飾る望みは捨てていない。

エリウド・キプチョゲ

マラソンのオリンピック王者エリウド・キプチョゲは、夢の2時間切りに集中すべく今大会の出場を回避。

タイムを26秒縮める挑戦は2017年にモンツァで失敗したものの、10月12日にウィーンで2度目のチャンスを迎える。

34歳のケニア人ランナーはオーストリアに拠点を移し、2時間の壁を超えるために最新のテクノロジーとトレーニングメソッドを活用。

自信に満ちた表情で次のように語った。

「絶対にできると確信している」

IAAF世界選手権の女子800mにキャスター・セメンヤが出場できない理由は?

女子800mで世界連覇を成し遂げている28歳は、今大会で王座防衛を目指すはずだった。しかし、スイス連邦最高裁への不服申立てに対する最終判決が出ていないため、南アフリカの女王は同種目への出場を制限されてしまった。

セメンヤのような性分化疾患(DSD)を持つアスリートについて、スポーツ仲裁裁判所はIAFFの規定を支持しており、彼女はその裁定に異議を申し立てている。

正確には中距離(400m~1マイル)以外のレースなら出場可能だが、セメンヤの願いはあくまでタイトルを守ること。それができない限り、彼女は世界選手権に出場しないと断言している。

関連記事:キャスター・セメンヤ:問題解決への道筋は?

初めてづくしの世界陸上

ドーハでの今大会は中東で初めて開催される世界選手権

カタール史上最大のスポーツイベントでもある。

さらに今大会は、2022年にカタールで開催されるFIFAワールドカップのテストイベントに位置づけられている。

会場となるハリーファ国際スタジアムは、多くのサッカー場と同じく冷房を完備。

涼しいスタジアムに足を踏み入れると、色鮮やかなピンクのトラックが目に飛び込んでくるはずだ。

世界選手権では通常、ブルーまたはレンガ色のトラックが使用される。

組織委員会はドーハならではの個性を引き立たせるため、この大会の感覚とテイストに合わせてピンクを選択した。

The mixed relay.
The mixed relay.The mixed relay.

IAAF 世界選手権のマラソンは何時にスタート?その理由は?

中東の酷暑を避けるため、マラソンは男女とも現地時間深夜にスタートする。

それでもなお、気温は25℃以上と予想されている。

ドーハの海岸沿いへ続くコースでは、美しいネオンの光がランナーたちを出迎える。

マラソン女子世界記録保持者のポーラ・ラドクリフは「息をのむような夜景でも観客を楽しませてくれるコース」とコメント

「素晴らしいパフォーマンスにも期待したい」と付け加えた。

例年より遅い秋開催

9月18日に開幕した1976年の第1回大会以降、世界選手権は毎回夏に開催されてきた。

ドーハでの今大会は、ダイヤモンドリーグ終了後のに開催。アスリートの多くがすでにシーズンを終えている。

さらに競技スケジュールも微調整され、今大会では午前中のセッションがなくなった。

この新たなフォーマットでは、過去17大会で初めて夜のセッションも分割され、1時間の中断を挟むことが決まっている。

そして東京2020オリンピック競技大会に先立ち、男女混合4x400mリレーが初めて実施される。

デイリーハイライト:

詳細な日程はこちらのIAAF公式サイトから参照可能。

ドーハ時間でリストされたハイライトは以下の通り(カッコ内に中央欧州標準時夏時間/日本時間を表記):

1日目、9月27日

16:35(15:35/22:35)男子100m予選 ジャスティン・ガトリン(アメリカ)、ディバイン・オドゥドゥル(ナイジェリア)

17:10 (16:10/23:10) 女子800m予選

23:59 (22:59/翌5:59) 女子マラソンエドナ・キプラガト(ケニア)、ルース・チェプンゲティッチ(ケニア)、ルティ・アガ(エチオピア)、ウォルクネッシュ・ゲデファ(エチオピア)

2日目、9月28日

16:30 (17:30/22:30) 女子100m予選 シェリー=アン・フレーザー=プライス(ジャマイカ)、エレイン・トンプソン(ジャマイカ)、マリージョゼ・タルー(コートジボワール)

18:05 (17:05/23:05)男子400mハードル準決勝 ライ・ベンジャミン(アメリカ)、アブデラマン・サンバ(カタール)、カルステン・ワーホルム(ノルウェー)

20:40 (19:40/翌2:40) 男子走幅跳決勝ルボ・マンヨンガ(南アフリカ)、フアン・ミゲル・エチェバリア(キューバ)、ジェフ・ヘンダーソン(アメリカ)

21:10 (20:10/翌3:10) 女子10000m決勝

22:15 (21:15/翌4:15) 男子100m決勝

3日目、9月29日

20:05 (19:05/翌2:05) 男子200m予選 ノア・ライルズ(アメリカ)、シェ・ジェンイェ(中国)

20:40 (19:40/翌2:40) 女子棒高跳決勝 – 注目選手:エカテリーニ・ステファニディ(ギリシャ)、ジェニファー・サー(アメリカ)、サンディ・モリス(アメリカ)

21:20 (20:20/翌3:20) 女子100m決勝

22:35 (21:35/翌4:35) 混合4x400mリレー

4日目、9月30日

21:20 (20:20/翌3:20) 男子5000m決勝

22:10 (21:10/翌4:10)女子800m決勝

22:40 (21:40/翌4:40) 男子400mハードル

5日目、10月1日

20:05 (19:05/翌2:05) 男子棒高跳決勝アルマンド・デュプランティス(スウェーデン)、サム・ケンドリックス(アメリカ)、ルノー・ラビレニ(フランス)

22:10 (21:10/翌4:10) 男子800m決勝

22:40 (21:40/翌4:40) 男子200m決勝 ノア・ライルズ(アメリカ)、シェ・ジェンイェ(中国)

6日目、10月2日

20:35(19:35/翌2:35)男子400m準決勝マイケル・ノーマン(アメリカ)、アキーム・ブルームフィールド(ジャマイカ)

22:35(21:35/翌4:35) 女子200m決勝 シェリー=アン・フレーザー=プライス(ジャマイカ)、エレイン・トンプソン(ジャマイカ)、ディナ・アッシャー=スミス(イギリス)

22:55(21:55/翌4:55)男子110mハードル

7日目、10月3日

23:50(22:50/翌5:50) 女子400m決勝

8日目、10月4日

20:15(19:15/翌2:15) 男子走高跳

21:45(20:45/翌3:45) 男子3000m障害決勝

21:30(20:30/翌3:30) 女子400mハードル決勝

22:20(21:20/翌4:20) 男子400m決勝

9日目、10月5日

20:35 (19:35/翌2:35) 女子三段跳 カテリネ・イバルグエン(コロンビア)、ユリマル・ロハス(ベネズエラ)

22:05 (21:05/翌4:05) 男子4x100mリレー

22:15 (21:15/翌4:15) 女子4x100mリレー

23:59 (22:59/翌5:59) 男子マラソンジョフリー・キルイ(ケニア)、モジネット・ゲレメウ(エチオピア)、レリサ・デシサ(エチオピア)

10日目、10月6日

19:40(18:40/翌1:40) 男子1500m

19:55(20:55/翌1:55) 男子やり投

20:00(19:00/翌2:00) 男子10000m

21:15(20:15/翌3:15) 男子4x100mリレー

21:30(20:20/翌3:30) 女子4x100mリレー

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