注目記事

F1グランプリシリーズがバーチャルで開催。“おうち時間”を充実させる自転車やヨガの人気も急上昇【スポーツのデジタル化】

野口みずきや柏原竜二らも賛同し、陸上に励む中高生をサポート

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

新型コロナウイルス感染の不安のなか、「密閉・密集・密接」という「3密」を避けた状態で取り組めるeスポーツやバーチャルスポーツの人気が急激に高まっている。自転車やF1、ゴルフなどでは現役アスリートも参加したレースが続々と開催。また、一般人の運動不足解消を推奨するアプリやオンライン配信なども活発化している。

カーレースは昔からテレビゲームなどで楽しまれており、F1はバーチャル大会との相性が良い

自転車、F1、ゴルフなどのバーチャル大会が続々開催

「ステイホーム」の生活様式が浸透しつつあるコロナ禍において、アスリートだけでなく一般レベルでも身体運動を伴う体感型のバーチャルスポーツが注目を浴びている。

なかでも代表格はサイクルトレーナー機材の「Wahoo KICKR」だろう。負荷を自動で変化させることができるだけでなく、コンピューターソフトと組み合わせて使えばリアルな乗車感覚を得ることができる。

「Wahoo KICKR」との関係で特に人気を博している「Zwift」は、自転車のプロ選手らが参加するバーチャルレース大会にも用いられているソフトだ。「Zwift」は、3Dの仮想空間が画面上に再現され、コースの傾斜などに合わせてKICKRの負荷が変化する点を魅力とする。屋内で完結できるため、新型コロナウイルスの感染予防はもちろん、天候に左右されない、落車の危険性がない、実際の道路と異なり信号待ちをせずに済む、といったメリットが挙げられる。一方のデメリットは、外の空気や景色を肌で感じられないことが一つ。また、ローラー台の手配や設置の手間がかかるため、環境を整える必要がある。

モータースポーツ界でもデジタルへの展開があり、F1は、3月のオーストラリアグランプリが中止となると、「F1 eスポーツ・バーチャル グランプリ シリーズ」が立ち上げられた。これはF1公式ゲーム「F1 2019」を使用し、ステアリング(ハンドル)とペダル専用のコントローラーでマシンを操作して競い合うものだ。3月以降、通常開かれる予定だったスケジュールどおりに仮想空間でレースが行われており、シャルル・ルクレール(フェラーリ)やランド・ノリス(マクラーレン)といった現役ドライバーのほか、OB選手やサッカーのアルゼンチン代表セルヒオ・アグエロなども参戦している。

ゴルフでは、男子ヨーロピアンツアーがバーチャルで開催された。5月9日から6月6日の5日にわたって5つのコースが舞台となり、選手たちは主に自宅から参加。大会で使用されたのは、野球界でも知名度が上がっている弾道測定器「トラックマン」で、選手がボールを打つと、ドップラーレーダーで解析された弾道の結果がバーチャルコースの画面に表示される仕組みだ。大会ではオランダのウィル・ベセリンが2勝を挙げるなど、存在感を見せつけた。

サイクルトレーナー機材を用いる自転車愛好家が増えてきた。プロ選手らが参加するバーチャルレース大会も行われている

ナイキのエクササイズ動画にゆりやんレトリィバァが登場

外出自粛が呼びかけられ、“おうち時間”が増えたことをきっかけに、運動不足解消に努める一般人も増えている。同時に、そうした人々をサポートする企業などの動きも活発化した。

たとえば、休業を余儀なくされたジムやスタジオの一部は、これまで有料だったレッスンやアプリの無料トライアルを導入し、自宅でのエクササイズやヨガ、ボクシングのトレーニングを推奨している。スポーツメイカーのナイキは、エクササイズのライブ配信を実施し、ヨガ・セッションにはお笑い芸人のゆりやんレトリィバァが出演して話題となった。

休業を余儀なくされたジムやスタジオの一部は、オンラインによるボクシングのトレーニングなどを推奨している

食品企業の取り組みにも注目したい。サントリー食品インターナショナルは、「特チャット」と呼ばれるサービスを3月12日に開始した。これは「伊右衛門 特茶(特定保健用食品)」のLINEアカウントで、同社が提唱する「食事・運動・特茶」という健康習慣「特茶リズム」の実践を支援するもの。LINEのトーク機能を使った日本初のトレーニングAIチャットで、カリスマクロスフィットトレーナーのAYAさんによるパーソナルトレーニング「特チャットwith AYA」の配信も6月10日まで行っていた。

キリンビバレッジは、サッカーとダンスの動画コンテンツを「ゲンキリン」WEBサイト内の特設ページで5月1日から公開した。動画には久保建英、中井卓大、武藤嘉紀、森重真人、吉田麻也といった選手が登場し、家でできるペットボトルのキャップを使ったフィンガー・フットボールの模様を配信している。

家でも楽しめる「指サッカー」にトライ⚽️

久保選手、吉田選手らサッカー選手5人が指で魅せるサッカー動画を #ゲンキリン サイトで公開!

家でもスーパープレイ!
ぜひあなたの大技も #GENKIRINCUP をつけて投稿してね💪#Girls² がレクチャーする #お家ダンス 動画も🤸https://t.co/5Jw4qgiXqQ pic.twitter.com/65TvgBJTmR

— キリンビバレッジ♪ (@Kirin\_Company) May 1, 2020

野口みずきらが賛同し中高生向けオンラインレースを開催へ

新型コロナの影響を受けたのは、トップアスリートだけではない。主要大会が軒並み中止となっている中高生へのサポートも、バーチャルの形で取り入れられている。

陸上の男子800メートル前日本記録保持者である横田真人氏を中心とする合同会社TWOLAPSなどは、全国の中高生が無料で参加できるオンラインレース「VIRTUAL DISTANCE CHALLENGE~記録を記憶に残す夏~」の開催を発表している。通称「バーチャレ」という大会には7月20日以降に参加登録してもらい、8月14日から23日の間にレース動画やタイムをアップロードした選手たちのエリア別ランキングなどを作成。動画はYou Tubeなどで配信される予定だという。

同企画にはアテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきや、箱根駅伝で活躍した「2代目・山の神」柏原竜二などが賛同しており、中長距離種目を中心に、将来の日本スポーツ界を担う子どもたちの競技意欲を取り戻すきっかけづくりが目的だ。

マルチスポーツで新型コロナの影響によりリアルな大会が中止となる一方で、仮想空間を利用し、リアルでは実現するはずのなかったレースや大会、対戦が見られるのはバーチャルスポーツならではの魅力となっている。今後、コロナが収束しても、バーチャルスポーツは新たな競技の形として定着する可能性を秘めている。