フィギュアスケート

ブライアン・オーサー独占インタビュー:「羽生が4回転アクセルを跳ぶにはフィジカルが必要」

文: ZK Goh ·

フィギュアスケートのオリンピック銀メダルを2回(1984年、1988年)獲得し、現在はカナダ・クリケットクラブで多くの有力選手を指導するブライアン・オーサー氏が『オリンピック・チャンネル』のビデオインタビューに応じた。新型コロナウイルス感染拡大によって、フィギュアスケート界も世界選手権が中止になったが、その状況で選手たちはどのように過ごしているのか。

4回転アクセルに挑む羽生結弦

羽生結弦は4回転アクセルを成功させるための身体トレーニングに取り組んでいると、羽生を指導するブライアン・オーサー氏がオリンピック・チャンネルに語った。

このインタビューが行われたのはオリンピック・チャンネルの公式インスタグラム内の『Incoming Call』。司会はアッシュ・タロック。そこでオーサー氏は2度のオリンピック金メダリストである羽生にはこのジャンプを成功させる技術は既にあるが、更に身体能力を高める必要があると言及した。

「ユヅと私は4回転アクセルについて話し合ってきました。ユヅは素晴らしい技術を持っていますし、それを常に維持しています。私たちはこの回転をコントロールするだけの身体を作り上げるためのフィジカルがもっと必要になるということで同意しています。もちろん、今以上の高さは必要になりますし、そのためにはもっと全体的なパワーをつけなくてはいけません。それは簡単に手に入るものではなく、努力して獲得しなくてはいけないものです」とオーサー氏は指摘。

また、新型コロナウイルス感染拡大によって世界中でイベントが閉鎖されている現状については、「あえてここに良い面を見つけるとしたら、アスリートたちには身体を鍛えるための時間が与えられたということかもしれません」と語った。

世界選手権中止への失望

2月の四大陸選手権の際、羽生のコーチの一人であるギスラン・ブリアン氏は、3月に行われる予定の世界選手権で羽生が4回転アクセルに挑戦するかもしれないと発言していた。だが、世界選手権は開催予定日の1週間前になって中止が決定された。

オーサー氏は世界選手権に出場する予定だった教え子たちへの同情を口にした。そこには羽生、チャ・ジュンファン、エフゲニア・メドベージェワ、ジェイソン・ブラウンらが含まれる。

「それはとてもつらい出来事でした。失望もしました。しかし、私は彼らが皆、中止の事実を受け止めたことを誇りに思っています。彼らは世界中で何が起きているか、隔離がいかに重要であるかを理解していました。落胆したかと問われたら、答えはイエスです。彼らは世界選手権に向けて準備ができていたかと問われたら、その答えもイエスです。今はただ、それらのすべての努力を来年また繰り返して行うだけです。はたして来年はあるのか? グランプリ・シリーズや国内大会は? それは誰にもわかりません。ヨーロッパ選手権、四大陸選手権、世界選手権、こうした大会が開かれることを望むだけです」

ブライアン・オーサー氏に師事するロシアのエフゲニア・メドベージェワ

メドベージェワは「休息に感謝」

オーサー氏が指導する選手たちは現在世界中に散らばって自宅待機を余儀なくされている。時差などのさまざまな障害はあるが、オーサー氏は彼らが互いに連絡をとりあっていると言った。

「昨日はなかなか楽しかったです。ジェイソン・ブラウンがカナダ・クリケットクラブに所属するメンバーでフィットネスのオンライン・クラスを行ったのです。エフゲニア・メドベージェワ、チャ・ジュンファン、エカテリーナ・クラコワらもいましたし、多くのジュニア選手たちも、カナダからは初心者の子供たちまでが参加しました。彼らはみな世界中に散らばっていますので、ジェイソンは時間を見つけるのに苦労したみたいです」

「選手のうち何人かはトロントに残っています。また何人かは自分の国に帰国しました。エフゲニアは日本に行って、そこで自主隔離をしています。彼女はとても厳格に自主隔離のルールを守っています。私は若い選手たちがこの状況を真剣に考えていることを誇りに思っています。私たちは皆、基本からすべてをやり直すときなのかもしれません。私がもっとも恐れているのは、氷上に戻ってきた選手たちが怪我をすることです。だから彼らが戻ってくるときには体調を万全にしておいてほしい。彼らはそのためにできるだけのことをしていますし、準備は出来ていると思います」

メドベージェワは昨年12月のロシア選手権でシーズンを終えて以来、大会には出ていない。オーサー氏はこのオリンピック銀メダリストについては心配していないと言った。

「ロステレコム杯(グランプリシリーズ)でのエフゲニアは彼女の最高のスケーティングを見せたと思います。それはとてもアスレチックで、とても美しくて、すべてが信じられないほど完璧でした。彼女が作り上げてきたすべての素晴らしいものを一つにまとめることができたのです」

「彼女は休息が必要なことを理解していたのだと思います。だからこの状況に感謝しているでしょう。選手たちの多くは練習に戻りたがっていますし、試合に向けての準備もしたがります。彼女も今はそうでしょう。ときにはスポーツから離れてみることでそれが理解できることもあります」

オリンピックの思い出

インタビューの間、オーサー氏は自身が1988年カルガリー・オリンピックで銀メダルを獲得したときの思い出を語る前に、2018年平昌オリンピックで羽生とハビエル・フェルナンデスが繰り広げたパフォーマンスについての思い出を以下のように語っている。

「あれは本当に楽しかった。オリンピックは私にとってすべてです。スケートに関しては、私には2回のとても良いプログラムがありました。終わり方はそれぞれ違っていましたが。”Battle of the Brians”(訳者注:ブライアン・ボイタノとのライバル関係)はスケート史上に残ることは間違いないでしょう。私とブライアン(ボイタノ)はスケート・ファンが望むものすべてを見せることができました。私たちはファンをがっかりさせませんでした。我々はとても僅差でした。私はショート・プログラムで勝ち、彼はフリー・プログラムで勝ち、そして彼が全体で勝ちました。それを認めない人は1人もいませんでした」

羽生結弦(中央)とブライアン・オーサーコーチ(左)

翻訳:角谷剛

原文:BRIAN ORSER EXCLUSIVE: QUAD AXEL "MORE OF A PHYSICAL THING" FOR HANYU