レスリング世界選手権代表を勝ち取った川井梨沙子「辞めなくてよかった」、伊調馨は「後悔はない」

明暗がくっきり分かれたレスリングプレーオフ。勝った川井梨紗子にも、負けた伊調馨にも背負っているものがあった
明暗がくっきり分かれたレスリングプレーオフ。勝った川井梨紗子にも、負けた伊調馨にも背負っているものがあった明暗がくっきり分かれたレスリングプレーオフ。勝った川井梨紗子にも、負けた伊調馨にも背負っているものがあった

7月6日、レスリング世界選手権の日本代表選考プレーオフが行われ、オリンピック5連覇が期待される女子57キロ級の伊調馨が、川井梨沙子に僅差で敗れ、世界選手権の出場権を逃した。翌7日、日本レスリング協会が両者の試合後のコメントを公開した。

試合後の会見で悔しさをにじませた伊調馨
試合後の会見で悔しさをにじませた伊調馨試合後の会見で悔しさをにじませた伊調馨

「普通にできたことができなくなった」(伊調)

川井に敗れ世界選手権への道が断たれた伊調は、「ここまでやるべきことやって準備してきたので、後悔はないです。自分が弱かったとは思わない。梨紗子が強かった」と、今回の“決着戦”について述べている。

今回の試合に至るまで、2018年12月の天皇杯=全日本選手権で復帰するまでにも様々なことがあった。復帰当初は、体調的な問題から階級を下げるという情報もあった。筋肉や体重は戻したものの、休養前の2年前まで普通にやれていたことができなくなる難しさを覚えていたという。

「感覚がいかに重要なことか(を感じた)、そんな毎日でした。普通にやっていたことをやらなくなると、できなくなる。そこからでしか得られなかったものもありました」

精神的な問題、年齢的な問題と向き合いながら歩んできた伊調にとっては、自力での東京五輪出場が消えたものの、充実した1年だったと振り返る。悔いとすれば、自身を応援してくれた人たちへの恩返しが“自力”でできなくなったことだ。

「この会場にもたくさんの仲間、家族など、たくさんの人たちが背中を押してくれて、その人たちに世界選手権や東京オリンピックで戦う姿を見せられれば、と思ってやってきました。とりあえず見せることができなくなり、悔しいです」と明かしている。

様々なことを背負って戦った川井梨紗子は、決着後にほっとした表情を浮かべていた
様々なことを背負って戦った川井梨紗子は、決着後にほっとした表情を浮かべていた様々なことを背負って戦った川井梨紗子は、決着後にほっとした表情を浮かべていた

世界選手権切符を勝ち取った川井にも苦悩

一方、プレーオフでは3-3ながらビッグポイントの差で伊調を撃破した川井もまた、追い込まれたうえで世界選手権への切符をつかんでいた。

「馨さんも前回(明治杯=全日本選抜選手権)と違ったふうに来ると思い、自分もしっかり考えながらやってきた。作戦通りにはできなかったが、普段やっている練習が自然と出たのでよかったかなと思います。(作戦では)タックルに入ってしっかり処理をしてテークダウンを取ること。簡単にはできなかった」

五輪4連覇の伊調を相手に2連勝するのは一筋縄ではいかなかったと語った。また、自身が伊調を追い上げる存在だったように、川井も危機感を持ちながらやってきたという。

「至学館大での後輩との練習では、後輩たちも私に勝ちたくてやっていたと思う。私も下から追い上げられながらも、負けないように頑張ってきました」

そうしたなかで、12月の天皇杯で伊調に敗れたとき、川井はレスリングを辞めることも考えた。だが、家族や周囲の関係者やファンのサポートが川井の気持ちを変えたようだ。

「ここ1年、自分を取り巻く環境も変わって、12月にはレスリングを辞めようと思って家族に相談しました。辞めなくてよかった。12月に負けてから、自分を思って応援してくれている人が想像以上にいることを知りました。自分が勝って喜んでくれる人がこんなにいるなら頑張ろう、という気持ちになりました。

明治杯の時、(伊調に)勝ったあと、会社の人が喜んでくれ、これが見たかったんだと思いました。応援してくれた人が一番の支えでした」

東京五輪出場権の行方は

川井が出場権を勝ち取った世界選手権は、9月14日から22日までカザフスタンで行われ、メダルを獲得した選手は、来年の東京五輪代表に内定する。

3位以内に入れなかった場合は、5位以内に入り12月に行われる全日本選手権で優勝すれば代表決定となる。この条件で全日本選手権を優勝できなかった場合は、プレーオフが行われる。

57キロ級については、川井が世界選手権でメダルを獲得すると、伊調の東京五輪出場は消滅する。伊調は、川井の結果を待つ立場となる。

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